平等へのステップ:世界の挑戦

ジェンダー平等へのステップ:男性育休推進の現状と企業の取り組み

Tags: ジェンダー平等, 男性育休, 働き方改革, キャリア形成, 企業事例

男性の育児休業(育休)取得を推進することは、現代社会においてジェンダー平等を推進する上で重要な鍵の一つとされています。育児や家事といった無償労働が女性に偏りがちな現状を変革し、男性も女性もキャリアとライフイベントの両立を実現できる社会を目指す上で、男性の育休取得は極めて大きな意味を持ちます。

男性育休の現状と課題

日本の男性育休取得率は近年上昇傾向にありますが、国際的に見ると依然として低い水準にあります。厚生労働省の調査によると、2022年度の男性の育児休業取得率は17.13%となり、前年度から増加しています。しかしながら、これには短期間の取得も含まれており、取得期間で見ると「5日未満」が約25%、「2週間未満」まで含めると約50%を占めるなど、長期取得はまだ一般的とは言えません。

男性が育休取得を躊躇する背景には、「職場への迷惑」「キャリア形成への不安」「経済的な問題」といった要因があると指摘されています。また、職場の雰囲気や過去に取得した男性がいないことなど、制度があっても利用しにくい「アンコンシャスバイアス(無意識の偏見)」を含む組織文化も大きな壁となっています。

ジェンダー平等に向けた企業の具体的な取り組み

このような課題に対し、ジェンダー平等の実現を目指す多くの企業が、男性の育休取得を促進するための具体的な取り組みを進めています。単に法で定められた制度を整備するだけでなく、取得しやすい環境づくりに力を入れています。

  1. 制度の拡充:

    • 法定以上の育児休業期間の設定: 法定育児休業とは別に、企業独自の長期休暇制度を設ける。
    • 育児休業中の給与・賞与補償: 安心して休業できるよう、育児休業給付金に加えて企業が給与の一部または全額を補填する制度を導入する。
    • 休暇取得目的の多様化:子の看護休暇に加え、不妊治療や産前ケアなど、育児に関わる幅広い目的での休暇・短時間勤務制度を整備する。
  2. 取得しやすい文化の醸成:

    • 経営層・管理職の意識改革: 経営トップが育休取得の重要性を発信し、管理職向けの研修を通じて、部下が気兼ねなく育休を取得できるようサポート体制を強化する。
    • ロールモデルの発信: 実際に育休を取得した男性社員の体験談や肯定的な影響を社内報や研修などで共有し、取得に対する心理的なハードルを下げる。
    • 取得目標の設定・公表: 企業として男性育休取得率や取得期間に関する目標を設定し、その達成状況を社内外に公表することで、組織全体で推進する姿勢を示す。
    • 業務分担・引き継ぎ支援: チーム内で育休取得者の業務を円滑に分担・引き継ぎできるよう、事前の準備やコミュニケーションを支援する仕組みを作る。
  3. 復職後のサポート:

    • キャリア面談: 育休前後に上司との面談を実施し、休業中のキャリアへの不安を解消し、復職後の働き方やキャリアプランについて話し合う機会を設ける。
    • 短時間勤務・フレックスタイム: 育児期間中の柔軟な働き方をサポートするため、短時間勤務やフレックスタイム制度などを利用しやすくする。

取り組みがもたらす効果と今後の展望

これらの企業の取り組みは、男性の育休取得率向上だけでなく、組織全体のジェンダー平等推進に様々な効果をもたらしています。女性は一人で育児を抱え込まずに済み、キャリアを継続しやすくなります。男性は育児に関わることで自身のライフワークバランスを見直し、エンゲージメントや仕事へのモチベーションが向上することが報告されています。また、組織全体の働き方が見直され、生産性向上や従業員満足度向上にも繋がる可能性があります。企業イメージの向上にも貢献し、優秀な人材の獲得・定着にも有利に働きます。

一方で、取得期間の短さや、企業規模による対応のばらつき、復職後のキャリアパスへの懸念など、課題も残されています。今後は、単に取得率を上げるだけでなく、多様な働き方を選択できる柔軟な制度設計、育児休業がキャリアの妨げにならない評価制度の見直し、そして社会全体での意識変革がより一層求められます。

読者への示唆

ジェンダー平等の実現に向けた企業の取り組みは、働きがいのある環境を選ぶ上で重要な指標の一つです。企業選びや自身のキャリアを考える際には、男性育休を含む育児・介護支援制度の実態や、社員がそれらを活用しやすい組織文化があるかを確認することが有益です。情報収集や企業のIR情報、説明会などを通じて、企業のジェンダー平等への姿勢を具体的に見極める視点を持つことが、自身のキャリア形成においても重要なステップとなるでしょう。社会全体で「育児は夫婦が共同で行うもの」という意識が広がることで、真のジェンダー平等に一歩ずつ近づいていくことが期待されます。